Turnbull river
ターンブル リバー


長々と書かれた、英語のガイドブックを苦戦しながら読む。
ぼんやりとしか伝わってこない内容に、かなりの忍耐力が試される。
それでも「いい川を見つける」、「大きな魚を釣る」、「山奥の釣りを成功させる」、
そんな欲望を満たすためだから、時間をかけても一つ一つ単語を辞書で調べていく。
どこに隠れているかわからない魚を、重い荷物を背負って捜しているようだ。
そんな苦悩の時間が、ターンブルリバーのガイドに書かれた数行で報われた。
「南島でもっとも大きな涌き水の川」、
「6.5〜11ポンドの大きな魚がいる」。
「この時を待っていた!」と一気に体は熱くなる。
英語と戦ううちから、すでに釣りは始まっている。
さらに必死になって、地図と照らし合せてはニヤニヤする。
というわけで、02年1月19日ターンブルリバーへ釣りに行ってきた。

ハースト(Haast)の町を過ぎ、タスマニア海を右に見ながら南へ20kmほど下ると、
ターンブルリバーに着く。
川沿に伸びるターンブルロードを上流へ3kmほど走ったところで、
車を止め、川に立った。
平坦な牧場がどこまでも広がり、音も立てず、ゆったりと蛇行しながら川が流れている。
雲一つない、紺色の空は「ボワーン」と辺りを包み、
風を止め、音を消し、時間すらも止めてしまっているようだった。
「天空に世界があるならここがそれで、いまにも羽が生えて飛んでいってしまうような」、
そんな現実離れした世界から、目を覚ますかのように、冷たい水で顔を洗った。

川幅20mほど、深さ3mはありそうな流れは、
川底の石を、浮かび上がらせるほどの透明度で、おもわず一口頂いた。
まったりと柔らかい水が口の中に広がった。
「南島でもっとも大きな涌き水の川」と書いてあったけど、
水草が川底を覆う、湧水らしい川とはちがっていた。
それでも、十分過ぎる美しさに、早速釣り竿を握り、魚を捜した。

川全体がポイントというゆったりとした流れには至る所に流木が沈み、
風で水面がザワつかないければ、魚を見つけるのは難しくなかった。
問題は、魚を針に掛けてからだった。
ほとんどの魚は、針にかかると流木へと突っ走り、
大きな魚にはことごとく、逃げられてしまった。
さらに竿も折ってしまった。
「流木に潜られないように、魚の突っ走りに耐えて、竿が耐えきれず折れてしまった」。
と言うなら、かっこいい話しだけど、
草に引っかかったフライをはずそうと、無理やり、
しかも大きな魚を目の前に興奮ぎみで、引っ張ったら、「ボキ」。
鈍い音と共に、竿は真っ二つになってしまった。
7万円で買った竿が…。
それでも広兄の竿を借りて、その魚を針に掛けたものの、
結果は同じ、流木へと潜っていった。

確かに、川はすばらしく、大きな魚もいた。
だけど、問題は別なところにあった。
ターンブルリバー、リベンジに来なければ…

02年1月20日オクウルより


          
掛けたビッグフィッシュはことごとく流木に潜られてしまい、
                     何とかキャッチした1尾

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